1.5次避難所とHutの親和性

1.5次避難所とHutの親和性 その他
1.5次避難所とHutの親和性

― 避難生活の“空白”を埋める、小さな生活インフラとして ―

災害時の避難は、単純に「避難所へ行けばよい」というものではありません。
発災直後に命を守るための1次避難所があり、その後、ホテル・旅館、福祉施設、仮設住宅など、より生活環境の整った場所へ移っていく段階があります。

しかし現実には、1次避難所から次の生活環境へ移るまでの間に、避難者の健康状態、家族構成、介護の必要性、乳幼児や妊産婦への配慮、持病、障害、ペット同行など、さまざまな事情を確認し、受入先を調整する時間が必要になります。

この「避難の途中」に生まれる空白を埋める考え方が、1.5次避難所です。

令和6年能登半島地震では、1次避難に加えて、市町の区域を越えた広域避難、2次避難所へ移るまでの一時的な滞在を想定した1.5次避難、ホテル・旅館等への2次避難が行われました。内閣府の防災白書でも、1.5次避難所では高齢者や障害者などの要配慮者が安心して暮らせるよう、診療体制、介護職員等の派遣、生活相談、福祉施設への入所調整などが行われたことが示されています。

1.5次避難所は「収容」ではなく「つなぐ」ための場所

1.5次避難所の本質は、単なる避難者の一時収容ではありません。
避難者の状態を把握し、必要な支援を整理し、次の受入先へつなぐための中継拠点です。

災害直後の1次避難所は、多くの人を受け入れることを優先します。体育館、公民館、学校施設などが使われますが、そこではプライバシーや静養、介護、医療的観察、母子の安心、感染対策といった細かな空間分離が難しくなります。

一方で、ホテル・旅館、福祉施設、仮設住宅などの2次避難先へ移るには、対象者の状況確認、移送手段、受入先との調整が必要です。石川県の能登半島地震の検証でも、健康状態を十分に把握しないまま2次避難を実施したことで、1.5次避難所の長期滞在者が増えたことや、名簿・健康状態等の情報共有不足が課題として挙げられています。

つまり、1.5次避難所には、次のような役割が求められます。

  • 避難者の健康状態を確認する
  • 高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦などの要配慮者を一時的に保護する
  • 介護、医療、福祉、生活相談につなげる
  • 2次避難所や福祉施設、仮設住宅への移行を調整する
  • 避難者を一律に扱うのではなく、それぞれの事情に応じて分類・支援する

ここに、Hutの大きな可能性があります。

Hutは1.5次避難所の考え方と高い親和性を持つ

Hutは、恒久的な住宅ではありません。
また、ホテルや旅館のような2次避難所の代替でもありません。

Hutの本質は、災害時に発生する「生活の空白」を埋めるための、小さな生活単位です。
発災直後の混乱の中で、避難者を一律に大空間へ収容するのではなく、状況に応じて小さく分け、守り、整え、次の生活再建へつなぐための空間です。

1.5次避難所に求められるのは、大規模な建物そのものではなく、人を状態別に受け止める空間設計です。
その意味で、Hutは1.5次避難所の思想を、具体的な空間として実装できる可能性を持っています。

たとえば、Hutを複数配置することで、以下のような機能別の空間を構成できます。

区画Hutが担う役割
一般待機区画2次避難先が決まるまでの一時滞在
母子区画乳幼児連れ、妊産婦の静養・授乳・休息
高齢・介護区画介助が必要な方の一時保護
医療観察区画体調不良者、服薬管理が必要な方の待機
静養区画睡眠不足、精神的疲労、不安の強い方の休息
面談・相談区画保健師、福祉職、自治体職員による聞き取り
ペット同行区画ペット同行避難者の分離配置とトラブル防止

これは、避難所を単なる「収容場所」ではなく、状態を整える場所へ変えていく考え方です。

Hutによる「機能別生活コロニー」

Hutの強みは、単体の建物としてではなく、複数のHutを組み合わせることで発揮されます。

一般区画、母子区画、高齢・介護区画、医療観察区画、静養区画などを分けて配置することで、避難者の状況に応じた機能別生活コロニーを形成できます。

大きな体育館に人を集めるだけでは、避難者一人ひとりの事情に応じた配慮は難しくなります。
しかし、小さなHutを組み合わせれば、空間を分けることができます。空間を分けることで、生活の秩序が生まれます。生活の秩序が生まれることで、支援する側も、誰に、どのような支援が必要なのかを把握しやすくなります。

1.5次避難所において重要なのは、「早く次へ移すこと」だけではありません。
次へ移るまでの間に、避難者の状態を悪化させないことです。

Hutは、そのための一時的な生活単位として機能します。

1次避難所と2次避難所をつなぐHut

避難の流れを整理すると、Hutの位置づけは明確になります。

1次避難所:命を守る場所
災害直後に身の安全を確保し、多くの避難者を受け入れる場所。

Hut型1.5次避難所:状態を整え、次につなぐ場所
避難者の健康状態や生活ニーズを把握し、静養・面談・医療観察・母子保護・介護支援などを行いながら、2次避難所や仮設住宅への移行を支える場所。

2次避難所・福祉避難所・仮設住宅:生活再建へ移る場所
ホテル、旅館、福祉施設、仮設住宅など、より安定した生活環境へ移行する段階。

この中でHutは、1次避難所と2次避難所の間に生まれる不安定な時間を支える役割を担います。
それは、避難者を「収容する」ためではなく、避難者を「次の生活へつなぐ」ための空間です。

災害時の公共安全を支えるMPSとしてのHut

災害時には、命を守ることだけでなく、避難生活の中で人々の安全、秩序、尊厳をどう維持するかが問われます。

避難所での過密、プライバシーの不足、体調悪化、介護負担、乳幼児や高齢者の不安、ペット同行者との摩擦などは、避難生活の質を大きく左右します。これらは個人の問題ではなく、災害時の公共安全に関わる課題です。

Hutは、こうした課題に対して、空間の側から解決策を提示します。
小さく分ける。
必要な機能を組み合わせる。
地域の状況に応じて配置する。
専門家だけに依存せず、地域や市民が関われる余地を残す。

この考え方は、Hutを単なる仮設的な小屋ではなく、MPS=Maintenance of Public Safety、災害時の公共安全を維持するための社会基盤として位置づけるものです。

Hutは、1.5次避難所の思想を空間化する

1.5次避難所とは、避難者を次の生活へつなぐための仕組みです。
Hutは、その仕組みに必要な小さな空間を提供します。

避難所を、大きな建物だけで考えるのではなく、小さな生活単位の集合として考える。
避難者を一律に扱うのではなく、状態や事情に応じて支援する。
災害直後の混乱から、生活再建へ向かうための中間地点をつくる。

そこに、1.5次避難所とHutの高い親和性があります。

Hutが目指すのは、災害時に「ただ避難する場所」を増やすことではありません。
人を守り、状態を整え、次の生活へつなぐことです。

1次避難所と2次避難所の間に生まれる避難生活の空白を埋める。
そのための小さな生活インフラとして、Hutは1.5次避難所の考え方と深く結びついています。

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